これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「高圧用開閉器としゃ断器の役割」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。
開閉しゃ断装置の必要性
電気の使用設備のあるところまで電線を導びいて、送られてきた電力は、使用設備の要求に応じて供給したり、しゃ断したりできなければなりません。また、電源から使用設備まで電力を輸送してくる途中で故障が発生した場合には、電力をしゃ断してやることも必要です。
このように電気回路を開閉する目的で使用されるものを開閉装置といい、この中にはしゃ断器、開閉器、断路器、ヒューズ、接触器などが含まれますが、しゃ断器に対しては電気回路の開閉能力(しゃ断投入能力)に厳しい注文がつけられており、常規の使用状態における電路および短絡などの異常状態における電路のしゃ断もできるのがしゃ断器です。
このように電気を安全に使用するためには、常時の開閉と同時に異常時のしゃ断も必要で、このため上記のような種々な開閉装置が作られています。
高圧しゃ断器
高圧のしゃ断器といえば、主として交流しゃ断器のことを指し、3000V以上の回路に使われるものです。高圧用しゃ断器の種類は、その消弧しゃ断原理によって油しゃ断器、空気しゃ断器、ガスしゃ断器、 磁気しゃ断器、真空しゃ断器が実用されています。
油しゃ断器は他のしゃ断器に比べて、 しゃ断性能、保守の面で不利な点はありますが、価格が安いことを始めいろいろな利点がありますので小、中容量しゃ断器として使われています。なお、小油量しゃ断器として油量を必要最小限にとどめて設計されたものもあります。
空気しゃ断器は、しゃ断の際に圧縮空気を吹付けてしゃ断するもので、油しゃ断器に比べて火災の危険がなく、しゃ断性能もすぐれています。
ガスしゃ断器としては、SF6しや断器があり、空気の代わりに絶縁耐力と消弧力のすぐれた六フッ化硫黄 (SF6)の圧縮ガスを用いたものです。
磁気しゃ断器は電磁力を利用してアークを吹き消す方式で、3~ 10kV級の高圧閉鎖配電盤に広く用いられています。
真空しゃ断器はしゃ断が外気と隔離された真空中で行われるため、しゃ断能力が優れており、小形で保守に便利なため36 kV程度までのものに使われています。
高圧開閉しゃ断装置というと以上のしゃ断器を想像するほどですが、このしゃ断器を主体として断路器、負荷開閉器、電カヒューズなどがあります。
断路器、負荷開閉器、電カヒューズの役割
断路器は高圧または特別高圧の電路に使用する開閉器ですが、これは定格電圧は印加され、その充電部の開閉に使うだけで、原則として負荷電流の開閉は行わず点検時の保安の目的で取付けられます。断路器の操作はフック棒で直接操作する方式と電動などによる遠方操作方式があります。
負荷開閉器は通常の負荷電流や充電電流などの開閉や通電ができ、かつその電路の短絡状態における異常電流の投入ができる開閉器で、油入開閉器、空気開閉器(圧縮空気使用)、気中開閉器、真空開閉器などに区分され、従来使われてきた柱上油入開閉器などはこの負荷開閉器に含まれています。
電カヒューズは過負荷および短絡保護用として広く使われており、簡単な構造で他のしゃ断器に比べて安価ですが、各相同時しゃ断が行えません。しゃ断したときは新品と交換することなど保守上の面倒さがあります。また、ヒューズそのものは、しゃ断装置であるので、これを開閉機構のできるものに取付けて断路形ヒューズとしたものが用いられています。
しゃ断器と断路器の役割
しゃ断器はその使用される電気系統において、正常状態および異常状態を合めて起こりうるあらゆる条件において、電流のしゃ断、系統の制御並びに最終保護の役目も果たすものです。つまり、しゃ断器の第一の役目は系統における機器の故障や電路の短絡などの祭に、できるだけ早く故障部分を線路から切離して損傷から守るという系統保護の役目があります。
第二の役目は、サービスの向上ということです。不断の送電ということは、日常作業に絶対必要なことで、停電時間は極力短くしなければなりません。このためにもしゃ断器はしゃ断後引続いて再閉路する方式のものが多く採用され、 しゃ断器に対して信頼度の高いものが要求されているのもこの保護とサービスの面から当然です。
次に断路器は一般にはしゃ断器の電源側に取付けられ、電源を投入する際は、この断路器を投入してからしゃ断器を投入して負荷電流を流します。また、送電を中止するときはしゃ断器で回路をしゃ断してから断路器を開きます。したがって、断路器は常識的には電流を切ることがなく、無電流の回路を操作し、電圧のみを切ってその回路をアイソレートするためにありますので、 しゃ断器以降の受変電設備の保守、点検の際の安全を確保するためにあるものと考えればよいことになります。
断路器は以上のように原則的には無負荷状態における電圧のみの開閉ではありますが、実際にはある程度の充電電流のしゃ断などは行えるようにできています。また、断路器は、一般に開閉状態が一見してわかるように充電部分の露出している構造のものが多いのですが、このことは逆に安全上重要なことのようにも解釈され、充電部
の露出した危険な状態の断路器が安全を意識させているものともいえるようです。
こうして、しゃ断器と断路器は一体となってインターロックされた状態で操作されるのが普通です。なお、高圧閉鎖配電盤に用いられるしゃ断器では引出し形のものが多いのですが、この場合はしゃ断器をしゃ断して断路位置まで移動できるようになっているますので、特に断路器を備えてない場合があります。
高圧受電設備の断路器、しゃ断器、負荷開閉器、電カヒューズの役割
第1図~第4図はこれらの役割を区別するため、高圧受電回路を例にとって示したものです。
第1図はCB形(しゃ断器)といわれ、前述の断路器としゃ断器を用いる方式で、この場合使用するしゃ断器は、もちろんこの回路電流をしゃ断できる容量のものが必要です。したがって、この方式は比較的容量の大きい高圧受電設備に適しています。
第2図はPF―CB形(電カヒューズ・しゃ断器)と呼ばれ、第1図の場合にPFが追加されて取付けられた方式ですが、この場合の相互の役割は、断路器についてはその役割は何れの場合も前述のとおりです。 第2図の場合はPF+CBで第1図の場合のCBの役割を果たすもので、PFは短絡電流のしゃ断、CBは通常電流のしゃ断を行うやり方で、こうすることによりCBは回路の短絡電流をしゃ断しないため、第1図のCBより性能を落としてもよいという経済的な利点があります。
第3図はLBSーPF形(1)(高圧交流負荷開閉器・電カヒューズ)と呼ばれ、LBSは断路器として使われると同時に負荷の開閉も行います。しかし短絡電流のしゃ断はPFで行おうとする方式です。
第4図はPFーS形(2)(電カヒューズ・高圧油入開閉器)と呼ばれていまあす。これはOS(高圧油入開閉器)で負荷電流の開閉を行い、PFで短絡電流をしゃ断し、DSで無負荷状態の回路の開閉を行います。
以上の例で各機器それぞれの役割を発揮していますが、これら四つの方式の特徴を簡単に比較すると、第1図のCB形は投資額の比較的大きい、つまり設備容量の大きい場合に適しており、この方式によればしゃ断後の再投入も可能となり、給電の信頼度を高めることができます。
第2図のPFーCB形はPFが短絡電流のしゃ断を受けもつため、CBは高性能であることを必要としないので経済的ですが容量は300~ 500 kVA程度の需要家に適しています。
第3図のLBSーPF形は設備費が低廉なため、最近設置される300 kVA程度以下の受電容量の小さい需要家では大部分がLBSーPF形で気中負荷開閉器を使しています。