これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「導体・不導体・半導体」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。
導体・不導体・半導体の区分
図1に示すように、断面積 $A$ [㎡]、長さ $L$ [m]の固体に電圧 $V$ [V]を印加したときに流れる電流を $I$ [A]とすると、その個体の電気抵抗率 $ρ$ は、次の式で表すことができます。
$ρ=\displaystyle\frac{AV}{LI}$ [Ω-m]
電気抵抗率 $ρ$ は各個体の特有の値を示し、その値が大きいほど、電気を通しにくいものになります。導体とは電気を通しやすいもの、不導体(絶縁体)とは電気を通しにくいもの、半導体とは両者の中間位にあるものをいい、これを電気抵抗率 $ρ$ の値で区分すると、次のようになります。
- 導 体:$10^{-8}~10^{-4}$ [Ω-m]
- 半導体:$10^{-4}~10^{6}$ [Ω-m]
- 不導体:$10^{6}~10^{16}$ [Ω-m]
導体の性質と用途
導体には銀、銅、金、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉄などがあり、それらはいずれも次のような特徴を持っています。
- 0 Kにおいても電流をきわめてよく通じやすい
- 広い温度範囲にわたって抵抗率が非常に小さい
- 温度上昇に伴って抵抗率が微増する(抵抗温度係数が正)
銀は導体中でも最も抵抗率の小さな物質で、接触抵抗も小さいが高価であるため主に接点材料に使われています。
銅は銀に次いで低抵抗率の物質で、産出量も多いため導電材料として最も多く使われています。銅には圧延や焼きなましなどの加工差異により軟銅、硬銅および半硬銅があります。軟銅はケーブルや絶縁電線の導体材料に、硬銅は機械的な強度が必要な架空電線材料などに用いられています。
アルミニウムは、抵抗率が銅の1.67倍と大きいのですが、比重は30%と軽く、比較的に安いので大電流を通じる母線や超高圧大容量架空送電線路の導体材料などに用いられています。
半導体の性質と用途
半導体にはシリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、亜酸化銅(Cu2O)、セレン(Se)などがあり、次のような特徴を持っています。
- 0 Kでは電流を流さない
- 温度上昇に伴って抵抗率が著しく減少する(抵抗温度係数が負)
- 電圧ー電流特性が非直線性
- SiやGeなどの真性半導体に3価の元素(B,Ga,Inなど)を微量に混入するとP形半導体が、5価の元素を微量に混入するとN形半導体が得られる
- 亜酸化銅やセレンと金属との接合面、P形半導体とN形半導体の接合面では、一方向にのみ電流を通ずる整流作用が生じる(図2)
- ホール効果や光電効果が大きい
半導体材料は次のような用途があります。
- 避雷器
- 整流素子、スイッチング素子、トランジスタなどの電子デバイス
- 太陽電池
- 測定用のセンサー
- 発光ダイオードやICカードなど、さまざまな電気製品
不導体の性質と用途
不導体は絶縁物ともいわれ、その化学的性質から有機絶縁物と無機絶縁物に分類されます。不導体の電気的性質としては、次のような特徴を持っています。
- 0 Kにおいて電流を流さない
- 温度上昇に伴って抵抗率が減少する(抵抗温度係数が負)が、その大きさは極めて小さい
主な不導体には次のようなものがあります。
- 無機系 … ガラス、マイカ、磁器、酸化マグネシウム
- 有機系 … 絶縁紙、樹脂、ゴム、ポリエチレン、塩化ビニル、テフロン、ベークライト、シリコン
不導体の用途は、絶縁電線やケーブルの絶縁物、電気機器巻線の絶縁物、絶縁と機械的支持の両方を目的とした碍子、コンデンサの誘電体などがあります。
電線、ケーブル
絶縁電線・ケーブルは、導体と不導体(絶縁物)との組み合わせからなるもので、その代表例として600Vビニル絶縁電線とCVケーブル、MIケーブルがあります。
600Vビニル絶縁電線
図3のように、導体(心線という)の周囲に塩化ビニル樹脂(PVC)を被覆したもので、600Vの交流電圧まで、使用でき、屋内配線や配電盤・制御盤内の回路配線材料などに用いられています。
CVケーブル
6kV 3心形CVケーブルの構図を図4に示します。ケーブルは絶縁電線をさらに金属やプラスチックなどで保護した構造を持つもので、地中配線に多く使われています。図4では、架橋ポリエチレンが絶縁体で、塩化ビニル樹脂が保護層(シース)になっています。なお、ジュート等の介在物は、ケーブルの仕上りを円形にするための詰め物です。
MIケーブル
MIケーブルは Mineral-Insulation ケーブルの略で、図5のように、銅またはSUS製の外装の中に導体があり、外装と導体間との絶縁体として MgO を充填したものです。このケーブルは、耐熱性に優れているので、防災用の電気配線や加熱炉などの高温箇所に施設する電気配線に用いられることが多いです。
半導体応用装置の例
ダイオード、トランジスタ、サイリスタ、ICなどの半導体製品は、多くの電子回路応用製品に使用されていますが、そのうちの2例を挙げてみます。
サーミスタ温度計
サーミスタの電気抵抗が温度によって著しく変化することを利用して、電気抵抗を測定して温度を知る装置です。携帯用の温度計は図6のようにサーミスタを内蔵した感温部と計器部から成ります。感温部が被測温体と接触して被熱されることにより計器がその温度を指示します。
CVCF装置
CVCF装置は電子計算機のように安定した電源を必要とする負荷への電源供給装置として利用されています。
CVCFは定電圧低周波数の略称で、サイリスタ応用製品です。その構成は図7に示すように、整流器・インバータおよび制御部からなります。
整流器
変動する交流電源を整流して所定の直流電圧を得ます。この部分は図7の破線で示す蓄電池を接続すると、交流電源が停電しても短時間は蓄電池から所定の直流を供給でき、無停電電源の機能を持つことができます。
インバータ部
直流を一定の周波数・電圧の交流に変換するもので、原理的にはサイリスタのスイッチング作用を利用したものです。
制御部
一定の交流出力を得るために動作信号を送る部分です。