これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「直流電動機の上手なメンテナンス」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。
直流電動機の種類
直流電動機(DC Motor)には、次のような種類があり、定格(定格電圧と定格速度,定格トルク)を同じにしたときの特性は、第1図のようになります。
- 分巻電動機
- 直巻電動機
- 和動複巻電動機
- 差動複巻電動機
- 他励電動機
直流電動機の特性と用途
直流電動機の特性と用途を示します。
分巻電動機
特性
(1)負荷にかかわらず一定速度で運転できる。
(2)精密な速度制御ができる。
用途
速度制御を要求される分野に使用される。
(1)印刷機
(2)送風機
(3)コンベヤ
(4)うず巻ポンプ
他励電動機
特性
(1)一定速度運転ができる
(2)精密な速度制御ができる
(3)正転・逆転の両方向に速度制御できる
用途
加減速運転を要求される分野に使用される
(1)製鉄用圧延機
(2)抄紙機
(3)巻上機
(4)工作機械
直巻電動機
特性
(1)始動時のトルクが大きい
(2)負荷の大きさによって速度が自動的に増減する
用途
高始動トルクを要求される分野に使用される
(1)電気鉄道の主電動機
(2)巻上機
(3)クレーン
和動複巻電動機
特性
(1)直巻電動機と分巻電動機の中間的な特性を有している
用途
高始動トルクで速度変化が大きくても差支えない分野に使用される
(1)巻上機
(2)工作機
(3)圧延機用補機
差動複巻電動機
特性
(1)回転度は負荷が大きくなるほど上昇する
用途
特別の場合にしか用いられない
トルクと速度の計算式
直流電動機のトルクや速度の特性を理解するには、これらの計算式を見るのがよいでしょう。
分巻電動機の例を第2図に示します。
直流電動機の効率
直流電動機の効率を第3図に示します。同じ定格出力では高速度のものの方が、低速度のものよりやや効率が良くなっています。
直流電動機の上手なメンテナンス
トラブルはどこが多いか
直流電動機にはブラシと整流子があって、ブラシは整流子面を滑りながら電流を流しています。したがって、ここの部分でのトラブルが一番多いようです。
正常な状態の整流子面は極めて平滑で、ブラシとの摺動面面は艶のあるアメ色をしています。これは整流皮膜と呼ばれ、整流のための大事な役割りを果たしています。トラブルはこの皮膜が破られ、条こん,段摩耗,のめり(ドラッギング)の現象を表わすようになります。
条こんとは
条こんとは、整流子とブラシとの摺動面に、円周方向に多くの細い溝が発生する現象をいいます。これは、整流子のトラブルの中で最も起こりやすく、厄介なものです。
ホコリその他の異物質の混入
空気中のホコリには固く研摩性の強いものがあり、これがブラシ摺動面に混入すると、細い多くの条こんが発生します。その他、整流子を研摩した時の銅粉や、マイカのまくれ片などが混入した場合も条こんが発生します。
整流子をペーパーがけやストーンがけした時は、整流子面だけでなく、ブラシおよび保持器も良く清掃してください。
湿気
ブラシと整流子が正常な擢動をするためには、適度の湿気が必要ですが、湿度が高すぎても低すぎても、条こんが発生します。湿度が高いと摺動面に過剰な水膜ができ、銅が電解作用によって負のブラシ面に析出されるためです。逆に湿度が低いと摺動性が悪くなり、ブラシの黒鉛皮膜がうまく乗らず、ブラシがチャタリングを起こして条こんが進行します。
有害な化学ガスが存在する場合
亜硫酸ガスなどの有害ガスの雰囲気の中で運転され、しかも湿気の多い場合には、水膜が電解質を形成して負ブラシに著しく銅が析出され、深い条こんが進行します。化学工場などは空調の改善や、ブラシ材料の検討が必要となります。
油や油ミストが付着した場合
擢動面に油や油ミストが付着すると絶縁皮膜を作り、ブラシと整流子の接触電圧が高くなり、放電によって整流皮膜が破壊され、条こんが発生します。
プラシの電流密度が低すぎる場合
軽負荷運転でブラシの電流密度が低い場合(2~3A/㎠)は、条こんが最も発生しやすいょうです。
段摩耗とのめり
炭素質ブラシや黒鉛質ブラシは、研摩性が強いので、段摩耗を起こしやすいようです。直流機では、電気黒鉛質ブラシがよく使われます。また、空気中のホコリが多い場合も、段摩耗が進行します。
整流子ののめり現象は、電流の局部的な集中通電によって、整流子が過熱軟化し。ブラシにひっかかれて、銅の結晶が整流子片の後端から反回転方向に伸長してくる現象です。火花やフラッシオーバーを起こすので、すぐ清掃が必要です。
カッパーピッキング
ブラシ擢動面に整流子から取られた銅の微粒子がスポット状に埋まり、整流子面に条こんが発生することがありますが、ブラシの押え圧力不足、チャタリング、多湿の時によくこのような現象が起こります。