これだけは知っておきたい電気設備の基礎知識をご紹介します。このページでは「地絡を検出する方法」について、維持管理や保全などを行う電気技術者の方が、知っておくとためになる電気の基礎知識を解説しています。
地絡とは
電気は危険なものですので、「接地はなぜ必要か」で述べる部分以外は電路は大地から絶縁することが、電気設備技術基準定められています。 地絡というのは、このように大地から絶縁されるべき電路の絶縁が異常に低下して、外箱などの金属部分に導通して、その線路が接地されたような状態になることをいい、このような状態を放置しておくと電路機器を損傷したり短絡事故に発展したり、あるいは感電や火災の原因となるので、地絡が生じたならば迅速にその部分を電路から切り離すことが必要です。
地絡によって生ずる現象
地絡によって生ずる現象は、高圧電路と低圧電路についてその現象は大分異なってきます。高圧の場合は不完全地絡がアーク地絡となり、アークが不安定に発生したり消滅したりする場合は異常電圧を発生して電路機器の絶縁をおびやかすことがあります。
また、高圧電路の場合は1線が第1図のように地絡すると、他の2線の対地電位は線間電圧に上昇してやはり絶縁をおびやかすことがあります(地絡前は各線の対地電圧は $V/\sqrt{3}$ です)。 次に低圧電路の場合の地絡は電圧が低いためアーク地絡になることはほとんどありません。しかし、低圧電路の場合は変圧器の二次側でB種接地工事が施されているため、接地していない他の相が完全地絡すると、B種接地を通して短絡状態となります。ここで地絡によって生ずる現象をまとめると、
- 高圧電路のアーク地絡の発生と、それによる設備機器の損傷(普通はそれ以前にしゃ断器がトリップする)
- 機器の非充電部分への地絡と、それによる人体への感電および機器の損傷
- 地絡電流による過熱が可燃物を着火さぜそ火災の原因となる
地絡の保護
このような現象による地絡事故を防止するには、(1)については地絡保護継電器により故障部分の切り離しを行い、(2)については機器の非充電部を接地することと漏電しゃ断器を取付けること、(3)については漏電しゃ断器または漏電警報器を使って漏電の検出を行うことが必要です。
地絡しゃ断装置の施設について、電気設備技術基準に詳細な規定がありますが、低圧電路に関しては金属製外箱を有する低圧電気機器で、60Vをこえる電圧で使用するものによる感電を防止する見地から、漏電しゃ断器などの地絡保護装置を施設することが義務づけられています。漏電しゃ断方式は電路に地絡が生じたときに零相電圧または零相電流を検出してその電路を自動しゃ断するもので、漏電の検出点を回路のどこへ置くかによって次の三つがあります。
(イ)変圧器二次側中性点またはB種接地工事の接地線に検出部を取付けて、その変圧器の二次側電路全体の地絡に対して自動しゃ断する方式(第2図)
(ロ)検出部を引込口付近の電路に取付けて、屋内電路全体に対して電路を自動しゃ断する方式
(ハ)幹線または分岐回路あるいは個々の負荷機器ごとに取付け電路の地絡を部分的に判別して、電路を自動しゃ断する方式
以上のうち(イ)は検出点以降のどこか一個所に地絡が生ずると他の健全な電路も同時にしゃ断されますが、(ハ)はその心配がありません。しかし、(ハ)の方式は漏電しゃ断器の取付個数が多くなり設備費は高価となります。
受電点における地絡保護は一般に誘導形または静止形の地絡継電器が用いられ、低圧側の地絡保護には主として漏電しゃ断器が用いられています。地絡電流の値は中性点直接接地の場合以外の非接地系統では地絡電流の値は僅かであるので地絡継電器は高感度に作られています。特に漏電しゃ断器は感電による死傷事故の防止を主目的としているので30 mAの高感度のものが多く用いられています。
地絡を検出する方法
高圧電路の地絡検出
統計によると自家用電気設備の故障の約70%は地絡に起因しているといわれており、地絡保護の重要性が指摘されています。電気設備技術基準でも自家用受電設備の電力の供給を受ける受電点に地絡検出しゃ断装置を設置することが定められています。
一方で、電力会社における高圧配電線の中性点は非接地方式となっていて、電力会社の配電用変電所においては第3図に示すように接地変成器で接地し、これを二次側の制限抵抗器で制限された有効電流と、配電線の対地充電電流を利用して地絡方向継電器を応動させて地絡回線を検出し、しゃ断する方式となっており、需要家の地絡継電器とは十分な保護協調が保たれています。一般に高圧需要家の地絡継電器の設定は次の値を目標に選ばれます。
- 動作電流:200 mA
- 動作時間:最大検出感度における動作電流の400%の電流値において0.1秒(ただし継電器のみの動作時間とし、しゃ断器の動作時間は含まない)
高圧電路の地絡は、高圧電路の一部の絶縁低下、例えば台風が襲来したときに受ける塩害で、碍子の絶縁が著しく低下して地絡現象が生じたり碍子のヒビ割れ等による漏れ電流が地絡現象を生ずることがあります。
このように高圧電路の地絡現象は、電圧が高いためわずかなリークにより地絡継電器を動作させることがあり、場合によっては、地絡継電器の動作した原因が明らかでなく、そのまましゃ断器を投入して送電を続けた例も多いです。しかし、このような場合は再び地絡継電器の動作することがあることを予想して原因を確かめるよう努めることが大切です。
低圧電路の地絡検出
低圧電路の地絡検出には主として漏電しゃ断器が使われています。前述の高圧電路の地絡は電気的な事故とて構内が全停電となる場合が多く、火災などにつながることは少ないのですが、低圧電路の地絡は建造物に接しているため火災や感電事故などにつながる場合が比較的多くなります。したがって、低圧電路の地絡検出は二次災害の防止からも重要な役割を果たしているわけです。
地絡しゃ断器を取付けなければならないところは、使用電圧が60V以上で、人が容易に触れる場所に施設する場合で、これにはいくつかのただし書きがあり、乾燥した場所に施設するとか、接地抵抗が 3Ω 以下であるとか、二重絶縁にするとか、絶縁変圧器を使ってその負荷側の電路を接地しない場合、その他いくつかの例外が定められています。この中で接地抵抗が 3Ω 以下であれば、地絡しゃ断器を設けなくともよいという規定がありますが、その理由は例えば第4図のようにB種接地抵抗が10Ω 、C種接地抵抗が90Ω であったとすると、この場合器具の漏電による外箱の電圧は、
$\displaystyle\frac{100}{10+90}×90=90$〔V〕
となり安全な電圧ではありません。しかしC種の接地抵抗が3Ωであったとすると、器具の外箱の電圧は
$\displaystyle\frac{100}{10+3}×3≒23$〔V〕
となり、この程度の電圧では特に地絡が生じても漏電しゃ断器を取付けなくとも人体に対する危険はないと判断することができるからです。また、二重絶縁というのは器具本来の機能を維持するために必要な絶縁 (これを機能絶縁という)のほかに器具全体を絶縁物で保護(これを保護絶縁という)した構造のものです。