インバータの動作原理とその応用

機械

このページでは、インバータの動作原理とその応用について、初心者の方でも解りやすいように、基礎から解説しています。また、電験三種の機械科目の試験で実際に出題された、インバータの動作原理とその応用についての過去問題も解説しています。

インバータの原理

交流電力を直流電力に変換することを順変換といいます。また、直流電力を交流電力に変換することを逆変換といい、 この装置を逆変換装置、またはインバータといいます。

インバータの基本回路

図1は、インバータの基本回路を説明するための原理図です。図(a)において、$t_o$[s]で$S_1$と$S_4$を閉じると、負荷 $R$ には左側が十極となる電源電圧 $V$[V]が加わり、$S_1→ R→ S_4$ へと負荷電流が流れます。

次に、$t_1$[s]で$S_1$と$S_4$を開くと同時に、$S_2$と$S_3$を閉じると、$R$ には、こんどは右側が十極となる電圧 $V$ が負荷に加わり、負荷電流は反対方向の $S3→ R→ S_2$ へと流れます。

ふたたび、$t_2$[s]で$S_2$と$S_3$を開くと同時に、$S_1$と$S_4$を閉じると、$t_o$[s]における状態にもどります。

これを繰り返すと負荷 $R$ には、図(b)のような方形波状の交流電圧が加わって、直流を交流に変換することができます。$t_o$[s]から $t_2$[s]までの時間 $T$[s]が1周期になり、この $T$ を変えることによって、交流出力の周波数を変えることができる。

実際のインバータでは、$S_1$~$S_4$のスイッチのかわりに、トランジスタやサイリスタなどの半導体バルブデバイスを使っています。

図1 インバータの原理図

トランジスタインバータ

図2(a)は、半導体バルブデバイスとしてトランジスタを使用したインバータの基本回路であり、図1の原理図のスイッチ$S_1$~$S_4$の役割をトランジスタ $Tr_1$~ $Tr_4$に置き換えたものです。

インバータの出力に誘導性の負荷が接続されている場合、図(b)のように、$ωt=0$[rad]において、$B_2$と$B_3$のベース電流を 0、$B_1$と$B_4$にベース電流を流して、 トランジスタ $Tr_2$ と $Tr_3$ をオフにし、瞬時に $Tr_1$ と $Tr_4$ をオンしようとします。しかし、誘導性の負荷のため、負荷電流 $i_o$[A]は $ωt=θ$[rad]まで $-i_o$[A]のまま流れ続けようとし、$Tr_1$ と $Tr_4$ はオンできません。この間は、$i_o$ はダイオード$D_1$と$D_4$を通って流れ、負荷のインダクタンスに蓄えられたエネルギーの一部が電源に帰還されます。$D_1$と$D_4$が導通したときに、 負荷の電圧は $-v_o$[V]から $+v_o$[V]に切り換わります。

図2 トランジスタインバータ

$ωt=θ$[rad]で負荷電流 $i_o$[A]は 0 になり、$Tr_1$と$Tr_4$が導通して、以後、$ωt=π$[rad]まで、$i_o$ は正方向に増加していきます。

$ωt=π$[rad]で、$B_1$と$B_4$のベース電流を 0、$B_2$と$B_3$にベース電流を流すと、$Tr_1$ と$Tr_4$ がオフになります。そのため、負荷電流は $π+θ$[rad]まで $+i_o$ のまま、ダイオード $D_2$ と $D_3$ を通って流れ、負荷側から電源に電力が帰還されます。また、負荷の電圧は $v_o$ から $-v_o$ に切り換わります。

$ωt=π+θ$[rad]で負荷電流は 0 になり、$Tr_2$ と $Tr_3$ が導通して、以後、$ωt=2π$[rad]まで、$i_o$ は負の方向に増加し、$ωt=0$[rad]のときと同じ状態にもどって、このような変化を繰り返します。

また、ダイオード $D_1$~$D_4$は、遅れ力率の負荷に対して一定期間遅れて変化する電流の流れを確保し、電流を電源に帰還させるためのもので、トランジスタなどの半導体バルブデバイスと逆並列に接続されています。このダイオードを帰還ダイオードといいます。

サイリスタインバータ

図3は、図1に示した原理図のスイッチ$S_1$~$S_4$のかわりに、サイリスタ(SCR)を用いたインバータの基本回路の一例です。トランジスタインバータと違って、サイリスタをターンオフさせるために、負荷 $R$ と並列に転流用のコンデンサ $C$ が接続されています。

$ωt=0$[rad]において、$G_1$ と $G_4$ にパルス状のゲート電流を流し、$Th_1$ と $Th_4$をターンオンさせると、$Th_1$→$R$→$Th_4$ の回路がつくられ、負荷 $R$ には電圧 $v_o$[V]が加わり、電流 $i_o$[A]が流れ,同時にコンデンサ $C$ にも、$v_o$ が加わり,充電されます。

$ωt=π$[rad]において、$G_2$ と $G_3$ にパルス状のゲート電流を流し、$Th_2$ と $Th_3$ をターンオンすると、$C$ に充電された $v_o$ によって、$Th_1$ と $Th_4$ は瞬時にターンオフし、$Th_3$→$R$→$Th_2$の回路がつくられて、$R$ には反対方向の $-v_o$ が加わり、$-I_o$ が流れます。また、$C$ は以前と反対の極性で充電され、$-v_o$ に達します。

$ωt=2π$[rad]で $Th_1$ と $Th_4$ をターンオンすると、$C$ に充電された $-v_o$ によって、$Th_2$ と $Th_3$ はターンオフし、$ωt=0$[rad]のときと同じ状態になり、この繰り返しによって交流出力に変換されます。

図3 サイリスタインバータ

インバータの電圧制御

インバータの出力電圧を可変にしたり、また、負荷の変動に対しても出力が一定になるためには、出力電圧の制御が必要です。また、半導体バルブデバイスの断続によってつくられる交流出力は方形波であり、出力電圧の制御とともに交流の波形を正弦波に近づけるための制御も必要です。

インバータの出力電圧は、出力である方形波のパルスの幅を変えて制御されます。これをパルス制御といいます。この制御には、図4のようなパルス幅制御パルス幅変調制御(PWM制御)があります。

パルス幅制御は、半周期における一つのパルス幅 $τ$ を変えて出力を制御します。一方、PWM制御は、半周期の出カパルスのうち、中央部分の幅は広く、両端のパルス幅は狭くなって、等価的に正弦波の出力が得られるような波形の制御が行われています。また、正弦波状の信号波が三角波形の搬送波より大きな範囲では、半導体バルブデバイスはオンになって、小さいところではオフとなって、パルス状の出力をつくります。

図4 インバータのパルス制御

フィルタ

インバータの出力である方形波には、高調波が多く含まれています。そこで、ひずみのない正弦波を得るためには、フィルタを設けて高調波を除去しています。

図5に示すインダクタンス $L$[H]とコンデンサ $C$[F]からなる回路は、基本波(低周波)を通過させ、高調波を除去する $LC$形フィルタです。インダクタンス $L$[H]は、高調波に対して大きなリアクタンスとして働き、コンデンサ $C$[F]は小さなリアクタンスとして働き、高調波が負荷に現れるのを防いでいます。

図5 LC形フィルタの働き

インバータの出力波形が正弦波に近くなるほど、高調波成分が少なくなるので、フィルタの容量は小さくなります。そのため、パルス幅変調制御のインバータが使われたり、図6のように、装置の中に方形波出力をもつインバータのユニットを複数設け、それぞれが適当な位相差 $θ$ をもって多重接続されたインバータが使われています。

この装置による出力は個々の方形波が重なって、正弦波に近い波形になります。これをさらにフィルタに通して滑らかな正弦波にしています。

図5 多重接続されたインバータ

インバータの利用

図7は、三相誘導電動機を可変速運転する可変電圧可変周波数電装置(VVVF電源装置)の主要部分の構成図の例です。この電源装置では、まず、入力された一定周波数の三相交流を整流回路で直流電力に変換し、インバータ回路へ供給します。

図7  可変電圧可変周波数電源装置(VVVF電源装置)

インバータ回路では、制御回路から出力されたベース電流によって、 6個の半導体バルブデバイスが動作し、直流を断続して、新たな三相交流に変換します。制御装置内の周波数設定器でベース電流を制御することによって、出力される三相交流の周波数を連続的に変化させ、三相誘導電動機の可変速運転を可能にしています。

また、電源装置は、インバータ回路に過電流が流れたり、直流回路の電圧が異常に上昇したり、あるいは出力が過負荷になったりなど、異常状態が生じたときの保護機能をもっています。すなわち、過電流・過電圧・過負荷電流などを検出し、その信号を制御回路に取り入れてベース電流を制御し、出力する三相交流の電圧や周波数を抑制するなどして電源装置の保護を行っています。

ある周波数をもった交流電力を、別の周波数の交流電力に変換する装置を周波数変換装置といいます。これには、図7に示すVVVF電源装置のように、交流をいったん直流に変換し、これを別の周波数の交流に変換する交流間接変換装置と、図8のように、直流を介することなく、交流をじかに周波数変換するサイクロコンバータとよばれる交流直接変換装置とがあり、とくに大容量の交流電動機を可変速運転する場合に用いられています。

図8 サイクロコンバータの原理

インバータを用いた交流電動機の可変速運転装置は、ビルの空調用送風機の電動機,エレベータ用電動機,電気鉄道の主電動機,電気自動車の電動機,身近なものではインバータルームエアコンの電動機の制御に利用されています。

また、電気通信設備やコンピュータなどの電源には、つねに一定の電圧と一定の周波数が得られる電源装置として、定電圧‐定周波数電源装置(CVCF電源装置)や無停電電源装置(UPS装置)が用いられ、ここにもインバータが利用されています。

図9は、サイリスタを利用したUPS装置の構成図です。図において、通常は交流入力から、整流装置と直流フィルタによって直流電力をつくり、これをインバータでふたたび交流電力に変換し、交流フィルタを通して、正弦波の交流出力を得ています。

図9 サイリスタ式UPS装置の構成図

一方、蓄電池は充電装置によって、充電状態が維持されています。交流入力電源が瞬時電圧降下や停電を生じた場合、ただちに停電を検出して、半導体スイッチを動作させ、整流装置の出力にかわって、蓄電池からインバータヘと直流電力が供給され、UPS装置の出力には寸断もなく、波形の乱れもない交流電力が得られるようになっています。

UPS装置はコンピュータ・電話・放送・航空管制・道路管制,ハイウェイのトンネル照明,ビル設備,病院手術室など、瞬時の電圧降下や停電が許されないところの電源装置に使用されています。

わが国の商用周波数は、東日本地域が 50Hz、西日本地域は 60Hzです。両地域の電力は図10に示す周波数変換装置を通して融通が行われています。50Hz側から60Hz側に電力を送る場合には、サイリスタ変換装置Ⅰで50Hzの電力を直流電力に変換したのち、サイリスタ変換装置Ⅱで直流から60Hzの電力に変換します。逆に、60 Hz側から50Hz側に電力を送る場合には、サイリスタ変換装置Ⅱで60Hzの交流から直流へ変換、サイリスタ変換装置Iが直流から50Hzの交流に変換を行います。このように、サイリスタ変換装置I,Hとも交流から直流への変換も,直流から交流への変換もできます。このような変換装置を可逆変換装置といいます。

津軽海峡に敷設された海底ケーブルを通して直流送電によって電力の融通を行っています。このため、北海道の函館と本州(青森)の上北に、可逆変換ができる交流-直流変換装置が設けられています。

図10 50Hz・60Hz周波数変換装置

太陽光発電での利用

太陽光発電での出力は直流電源ですので、電力系統と系統連系して電力を逆潮流させる場合、電力系統に悪影響を及ぼさないようにしなければなりません。それを担う装置として、パワーコンディショナ(PSC)という電力変換装置が必要になります。

パワーコンディショナは通常、昇圧チョッパ(DC/DCコンバータ)部とインバータ部に分類されます。昇圧チョッパは、変動する太陽電池の出力電圧をIGBTなどの電力用半導体スイッチング素子を用いて制御し、最大出力追従制御(MPPT)を行っています。

インバータは直流から交流正弦波を生成します。通常は、IGBTなどの電力用半導体スイッチング素子を用いたパルス幅変調(PWM)による電圧形電流制御インバータが用いられています。インバータ出力は系統連系を行うため、力率を 1 に近づけるようになっています。また、事故等による故障電流を送らないようにインダクタンス機器を入れて絶縁対策が施されています。

  

電験三種-機械(パワーエレクトロニクス)過去問

1997年(平成9年)問4

図のような直流チョッパによる直流電動機の制御で、パルス幅変調方式(PWM方式)によって直流電動機が減速する場合、直流チョッパの出力電圧vの波形として、正しいのは次のうちどれか。

1997年(平成9年)問4 過去問解説

パルス幅変調方式(PWM方式)は、周期Tは一定で、パルス幅を変化させる方式です。 該当するのは(3)のみです。

答え (3)

2002年(平成14年)問6

図1は、誘導性負荷が接続されたトランジスタインバータの基本回路である。この回路を構成するバルブデバイスは、トランジスタ $Tr_1$,$Tr_2$,$Tr_3$及び$Tr_4$ と $D_1$, $D_2$,$D_3$ 及び $D_4$である。

図2は、この回路が方形波インバータとして定常動作をしているときの図1中の出力電圧 $v$ 及び過電流 $i$ の波形を示す。

下表は、図2の $t_0$,$t_1$,$t_2$ 及び $t_3$ の 各期間にベース電流が与えられているトランジスタと通電状態にあるバルブデバイスの関係を示したものである。

下表の空白箇所(ア)及び(イ)に記入するバルブデバイスとして、正しい組み合わせたのは次のうちどれか。

2002年(平成14年)問6 過去問解説

期間 t0~ t1 では、

  1. Tr1 のベース電流が流れると、Tr1 はONの状態となる。
  2. Tr3 がOFFになると、負荷の逆起電力により D1 のアノードの電圧が急上昇して D1 がONの状態となる。
  3. Tr4 のベース電流が流れると、Tr4 はONの状態となる。
  4. Tr4 にも逆起電力が流れるため、D4 のアノードの電圧が急上昇して D4 がONの状態となる。
  5. 2及び4により電流 が反転して流れるが、逆起電力が消滅すると、両ダイオードはOFFの状態にもどる。

期間 t2~ t3 についても1~5と同様に考えることができます。

答え (1)

2007年(平成19年)問10

図は無停電電源装置の回路構成の一例を示す。常時は、交流電源から整流回路を通して得た直流電力を( ア )と呼ばれる回路Bで交流に変換して負荷に供給するが、交流電源が停電あるいは電圧低下した場合には、( イ )の回路Dから半導体スイッチ及び回路Bを介して交流電力を供給する方式である。主にコンピュータシステムや( ウ )などの電源に用いられる。
運転状態によって直流電圧が変動するので、回路B はPWM制御などの電圧制御機能を利用して、出力に( エ )の交流を得ることが一般的である。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として、正しい組み合わせたのは次のうちどれか。

 (ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)インバータ二次電池放送・通信用機器定電圧・定周波数
(2)DC/DCコンバータ一次電池家庭用空調機器定電圧・定周波数
(3)DC/DCコンバータ二次電池放送・通信用機器可変電圧・可変周波数
(4)インバータ二次電池家庭用空調機器定電圧・定周波数
(5)インバータ一次電池放送・通信用機器可変電圧・可変周波数

2007年(平成19年)問10 過去問解説

図は無停電電源装置の回路構成の一例を示す。常時は、交流電源から整流回路を通して得た直流電力を( インバータ )と呼ばれる回路Bで交流に変換して負荷に供給するが、交流電源が停電あるいは電圧低下した場合には、( 二次電池 )の回路Dから半導体スイッチ及び回路Bを介して交流電力を供給する方式である。主にコンピュータシステムや( 放送・通信用機器 )などの電源に用いられる。
運転状態によって直流電圧が変動するので、回路B はPWM制御などの電圧制御機能を利用して、出力に( 定電圧・定周波数 )の交流を得ることが一般的である。

答え (1)

2008年(平成20年)問10

交流電動機を駆動するとき、電動機の鉄心の( ア )を防ぎトルクを有効に発生させるために、駆動する交流基本波の電圧と周波数の比がほぼ( イ )になるようにする方法が一般的に使われている。この方法を実現する整流器とインバータとその制御の組み合わせの例には、次の二つがある。
一つの方法は、一定電圧の交流電源から直流電圧を得る整流器に( ウ )などを使用して、インバータ出力の周波数に対して目標の比となるように直流電圧を可変制御し、この直流電圧を交流に変換するインバータでは出力の周波数の調整を行う方法である。
また、別の方法は、一定電圧の交流電源から整流器を使ってほぼ一定の直流電圧を得て、インバータでは出力パルス波形を制御することによって、出力の電圧と周波数を同時に調整する方法である。
一定の直流電圧から可変の交流電圧を得るインバータの代表的な制御として、( エ )制御が知られている。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句として、正しい組み合わせたのは次のうちどれか。

(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)磁気飽和一定ダイオードPWM
(2)振動2乗ダイオードPLL
(3)磁気飽和2乗サイリスタPLL
(4)振動一定サイリスタPLL
(5)磁気飽和一定サイリスタPWM

2008年(平成20年)問10 過去問解説

交流電動機を駆動するとき、電動機の鉄心の( 磁気飽和 )を防ぎトルクを有効に発生させるために、駆動する交流基本波の電圧と周波数の比がほぼ( 一定 )になるようにする方法が一般的に使われている。この方法を実現する整流器とインバータとその制御の組み合わせの例には、次の二つがある。
一つの方法は、一定電圧の交流電源から直流電圧を得る整流器に( サイリスタ )などを使用して、インバータ出力の周波数に対して目標の比となるように直流電圧を可変制御し、この直流電圧を交流に変換するインバータでは出力の周波数の調整を行う方法である。
また、別の方法は、一定電圧の交流電源から整流器を使ってほぼ一定の直流電圧を得て、インバータでは出力パルス波形を制御することによって、出力の電圧と周波数を同時に調整する方法である。
一定の直流電圧から可変の交流電圧を得るインバータの代表的な制御として、( PWM )制御が知られている。

答え (5)

2009年(平成21年)問16

図1は、 IGBTを用いた単相ブリッジ接続の電圧形インバータを示す。直流電圧 $E_d$[V]は、一定値と見なせる。出力端子には、インダクタンス $L$[H]で抵抗値 $R$[Ω]の誘導性負荷が接続されている。
図2は、このインバータの動作波形である。時刻 $t=0$[s]でIGBT $Q_3$ 及び $Q_4$ のゲート信号をオフにするとともに $Q_1$ 及び $Q_2$ のゲート信号をオンにすると、出力電圧 $v_a$[V]は $E_d$[V]となる。$t=\displaystyle\frac{T}{2}$[s]で $Q_1$ 及び $Q_2$ のゲート信号をオフにするとともに $Q_3$ 及び $Q_4$ のゲート信号をオンにすると、$v_a$[V]は、$-E_d$[V]となる。これを周期 $T$[s]で繰り返して方形波電圧に出力する。
出力電流 $i_a$[A]は、$t=0$[s]で $-I_p$[A]になっているものとする。負荷の時定数は $τ=\displaystyle\frac{L}{R}$[s]である。 $t=0∼\displaystyle\frac{T}{2}$[s]では、時間の関数 $i_a(t)$ は次式となる。

$i_a(t)=-I_pe^{-\frac{t}{τ}}+\displaystyle\frac{E_d}{R}(1-e^{-\frac{t}{τ}})$

定常的に動作しているときには、周期条件から $t=\displaystyle\frac{T}{2}$[s]で出力電流は $I_p$[A]となり、次式が成り立つ。

$i_a(\frac{T}{2})=-I_pe^{-\frac{T}{2τ}}+\displaystyle\frac{E_d}{R}(1-e^{-\frac{T}{2τ}})=I_p$

このとき、次の(a)及び(b)に答えよ。
ただし、バルブデバイス(IGBT及びダイオード)での電圧降下は無視するものとする。

(a) 時刻 $t=\displaystyle\frac{T}{2}$[s]の直前では $Q_1$ 及び $Q_2$ がオンしており、出力電流は直流電源から $Q_1$→負荷→$Q_2$ の経路で流れている。$t=\displaystyle\frac{T}{2}$[s]で IGBT $Q_1$ 及び $Q_2$ のゲート信号をオフにするとともに、$Q_3$ 及び $Q_4$ のゲート信号をオンにした。その直後(図2で、$t=\displaystyle\frac{T}{2}$[s]から、出力電流が 0[A]になる $t=t_r$[s]までの期間)、出力電流が流れるバルブデバイスとして、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。

(1) $Q_1$,$Q_2$ (2) $Q_3$,$Q_4$ (3 )$D_1$,$D_2$ (4) $D_3$,$D_4$ (5) $Q_3$,$Q_4$,$D_1$,$D_2$

(b) $E_d=200$[V],$L=10$[mH],$R=2.0$[Ω],$T=10$[ms]としたとき、$I_p$[A]の値として、最も近いのは次のうちどれか。
ただし、$e=2.718$ とする。

(1) 32 (2) 46 (3) 63 (4) 76 (5)92

2009年(平成21年)問16 過去問解説

(a) 電流の流れを図に示します。

t=0~t1 のとき

ia は、インダクタンスLの放電作用で電流が上向きに流れています。この電流は、「L→D1→Ed→D2→R」に流れ徐々に 0 になります。Q1,Q2 はONできません。

t=t1~T/2 のとき

Q1,Q2 がONになります。電流は、「Ed→Q1→L→R→Q2→Ed」の経路で流れます。

t=T/2~T/2+t1 のとき

iaは、インダクタンスLの放電作用で電流が下向きに流れています。この電流は、「R→D4→ED→D3→R」に流れ徐々に 0 になります。Q3,Q4 はONできません。

t=T/2+t1~T のとき

Q3,Q4 がONになります。電流は、「Ed→Q4→R→L→Q3→Ed」の経路で流れます。

したがって、$t=\displaystyle\frac{T}{2}$[s]から、出力電流が 0[A]になる $t=t_r$[s]までの期間に出力電流が流れるバルブデバイスは、D3 と D4 になります。

答え (4)

(b) 題意より、式が与えられていますので、式を変形します。

$I_p=-I_pe^{-\frac{T}{2τ}}+\displaystyle\frac{E_d}{R}(1-e^{-\frac{T}{2τ}})$

$I_p+I_pe^{-\frac{T}{2τ}}=\displaystyle\frac{E_d}{R}(1-e^{-\frac{T}{2τ}})$

$I_p(1+e^{-\frac{T}{2τ}})=\displaystyle\frac{E_d}{R}(1-e^{-\frac{T}{2τ}})$

$I_p=\displaystyle\frac{E_d}{R}\displaystyle\frac{(1+e^{-\frac{T}{2τ}})}{(1-e^{-\frac{T}{2τ}})}$

時定数 $τ$ は、$τ=\displaystyle\frac{L}{R}=\displaystyle\frac{10}{2.0}=5$[ms]ですので、数値を代入していくと、

$I_p=\displaystyle\frac{200}{2.0}×\displaystyle\frac{(1+2.718^{-\frac{10}{2×5}}\:)}{(1-2.718^{-\frac{10}{2×5}}\:)}$

  $=100×\displaystyle\frac{1+2.718^{-1}}{1-2.718^{-1}}≒46$[A]

答え (2)

2012年(平成24年)問9

次の文章は、太陽光発電設備におけるパワーコンディショナに関する記述である。
近年、住宅に太陽光発電設備が設置され、低圧配電線に連系されることが増えてきた。連系のためには、太陽電池と配電線との間にパワーコンディショナが設置される。パワーコンディショナは( ア )と系統連系用保護装置とが一体になった装置である。パワーコンディショナは、連系中の配電線で事故が生じた場合に、太陽光発電設備が( イ )状態を継続しないように、これを検出して太陽光発電設備を系統から切り離す機能をもっている。
パワーコンディショナには、( イ )の検出のために、電圧位相や( ウ )の急変などを常時監視する機能が組み込まれている。ただし、配電線側で発生する( エ )に対しては、系統からの不要な切り離しをしないよう対策がとられている。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)逆変換装置単独運転周波数瞬時電圧低下
(2)逆変換装置単独運転発電電力瞬時電圧低下
(3)逆変換装置自立運転発電電力停電
(4)整流装置自立運転発電電力停電
(5)整流装置単独運転周波数停電

2012年(平成24年)問9 過去問解説

パワーコンディショナは、太陽光発電システムで作った「直流」の電気を、家庭内で使用できる「交流」に変換するための機器で、インバータの一種です。

近年、住宅に太陽光発電設備が設置され、低圧配電線に連系されることが増えてきた。連系のためには、太陽電池と配電線との間にパワーコンディショナが設置される。パワーコンディショナは( 逆変換装置 )と系統連系用保護装置とが一体になった装置である。パワーコンディショナは、連系中の配電線で事故が生じた場合に、太陽光発電設備が( 単独運転 )状態を継続しないように、これを検出して太陽光発電設備を系統から切り離す機能をもっている。
パワーコンディショナには、( 単独運転 )の検出のために、電圧位相や( 周波数 )の急変などを常時監視する機能が組み込まれている。ただし、配電線側で発生する( 瞬時電圧低下 )に対しては、系統からの不要な切り離しをしないよう対策がとられている。

答え (1)

単独運転
電力会社からの線路引き出し口から遮断器が引き外された状態において分散型電源からの発電を継続し、分散型電源が連系していた線路に接続している他の需要家にも有効、無効電力を供給している状態

自立運転
分散型電源の設置者の構内負荷のみに有効、無効電力を供給している状態(系統連系していない状態)

2012年(平成24年)問15

図1は、単相インバータで誘導性負荷に給電する基本回路を示す。負荷電流 $i_o$ と直流電流 $i_d$ は図示する矢印の向きを正の方向として、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 出力交流電圧の1周期に各パワートランジスタが1回オンオフする運転において、図2に示すように、パワートランジスタ $S_1~S_4$ のオンオフ信号波形に対して、負荷電流 $i_o$ の正しい波形が(ア)~(ウ)、直流電流 $i_d$ の正しい波形が(エ)、(オ)のいずれかに示されている。
その正しい波形の組合せを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) (ア)と(エ)
(2) (イ)と(エ)
(3) (ウ)と(オ)
(4) (ア)と(オ)
(5) (イ)と(オ)

(b) 単相インバータの特徴に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 図1は電圧形インバータであり、直流電源 E の高周波インピーダンスが低いことが要求される。
  2. 交流出力の調整は、$S_1~S_4$ に与えるオンオフ信号の幅 $\displaystyle\frac{T}{2}$ を短くすることによって交流周波数を上げることができる。または、$$E の直流電圧を高くすることによって交流電圧を高くすることができる。
  3. 図1に示されたパワートランジスタをIGBT又はパワーMOSFETに置換えてもインバータを実現できる。
  4. ダイオードが接続されているのは負荷のインダクタンスに蓄えられたエネルギーを直流電源に戻すためであり、さらにダイオードが導通することによって得られる逆電圧でパワートランジスタを転流させている。
  5. インダクタンスを含む負荷としては誘導電動機も駆動できる。運転中に負荷の力率が悪くなると、電流がダイオードに流れる時間が長くなる。

2012年(平成24年)問15 過去問解説

(a) パワートランジスタ S1,S4が オンになると、負荷電流 $i_o$の波形は、負荷にインダクタンスが含まれていますので、遅れて変化します。また、負荷にインダクタンスを含んでいるので、電流は最初は流れにくく、徐々に増加します。したがって、負荷電流 $i_o$ の波形は、(ア)になります。

また、直流電流 $i_d$ は 負荷電流 $i_o$ と同じ方向に流れます。したがって、直流電流 $i_d$ の波形は、(エ)になります。

答え (1)

(b) (1)、(2),(3),(5)は正しい記述です。

(4)の記述で、インバータを構成するパワートランジスタにはダイオードが並列接続されています。このダイオードを環流ダイオードといいます。遅れ力率の負荷では、一定期間遅れて変化する電流の影響で、高電圧が発生します。環流ダイオードは、インダクタンスに蓄えられたエネルギーを直流電源にし、パワートランジスタの破壊防止とコイルのエネルギーを負荷に出力します。ダイオードが導通することによって得られる逆電圧でパワートランジスタを転流させるものではありません。

答え (4)

2013年(平成25年)問16

図は、パルス幅変調制御(PWM制御)によって 50[Hz]の交流電圧を出力するインバータの回路及びその各部電圧波形である。直流の中点 M からみて端子 A 及び B に発生する瞬時電圧をそれぞれ $v_A$[V]及び $v_B$[V]とする。端子 A と B との間の電圧 $v_{A-B}=v_A-v_B$[V]に関する次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) $v_A$[V]及び $v_B$[V]の 50[Hz]の基本波成分の振幅 $V_A$[V]及び $V_B$[V]は、それぞれ $\displaystyle\frac{V_S}{V_C}× \displaystyle\frac{V_d}{2}$[V]で求められる。ここで、$V_C$[V]は輸送波(三角波) $v_C$[V]の振幅で 10[V]、$V_s$[V]は信号波(正弦波)$v_{sA}$[V]及び $v_{sB}$[V]の振幅で 9[V],$V_d$[V]は直流電圧 200[V]である。$v_{A-B}$[V]の 50[Hz]基本波成分の振幅は $V_{A-B}=V_A+V_B$[V]となる。$v_{A-B}$[V]の基本波成分の実効値[V]の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 64 (2) 90 (3) 127 (4) 141 (5) 156 

(b) $v_{A-B}$[V]は、高調波を含んでいるため、高調波も含めた実効値 $V_{rms}$[V]は、小問(a)で求めた基本波成分の実効値よりも大きい。波形が 5[ms]ごとに対称なので、実効値は最初の 5[ms]の区間で求めればよい。5[ms]の区間で電圧を出力している時間の合計値を $T_s$[ms]とすると実効値 $V_{rms}$[V]は次の式で求められる。

$V_{rms}=\displaystyle\sqrt{\displaystyle\frac{T_s}{5}×{V_d}^2}=\displaystyle\sqrt{\displaystyle\frac{T_s}{5}}×V_d$[V]

実効植 $V_{rms}$[V]の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 88 (2) 127 (3) 141 (4) 151 (5) 163

2013年(平成25年)問16 過去問解説

(a) 題意より、$V_C=10$[V]、$V_s=9$[V]、$V_d=200$[V]なので、問題文で与えられた計算式より、$V_A,V_B$[V]を計算すると、

$V_A=V_B=\displaystyle\frac{V_S}{V_C}× \displaystyle\frac{V_d}{2}=\displaystyle\frac{9}{10}× \displaystyle\frac{200}{2}=90$[V]

基本波成分の振幅 $V_{A-B}$[V]は、

$V_{A-B}=V_A+V_B=90+90=180$[V]

したがって、基本波成分の実効値[V]は、

$\displaystyle\frac{180}{\sqrt{2}}≒127$[V]

答え (3)

(b) $v_{A-B}$ の高調波も含めた実効値 $V_{rms}$[V]は、$v_{A-B}$ の方形波は、1/4 周期で対称なため、50Hz の 1/4 周期である、0~5[ms]分を計算すると、実効値を求めることができます。

0~5[ms]の区間で電圧を出力している時間の合計値 $T_s$[ms]は、

$T_s$=(1.31-0.96)+(2.59-1.94)+(3.80-2.93)+(4.94-3.97)=2.84[ms]

実効値 $V_{rms}$[V]は、問題文で与えられた計算式より、

$V_{rms}=\displaystyle\sqrt{\displaystyle\frac{T_s}{5}}×V_d=\displaystyle\sqrt{\displaystyle\frac{2.84}{5}}×200≒151$[V]

答え (4)

2015年(平成27年)問9

次の文章は、電力変換器の出力電圧制御に関する記述である。
商用交流電圧を入力とし同じ周波数の交流電圧を出力とする電力変換器において、可変の交流電圧を得るには( ア )を変える方法が広く用いられていて、このときに使用するパワーデバイスは( イ )が一般的である。この電力変換器は( ウ )と呼ばれる。
一方、一定の直流電圧を入力とし交流電圧を出力とする電力変換器において、可変の交流電圧を得るにはパルス状の電圧にして制御する方法が広く用いられていて、このときにオンオフ制御デバイスを使用する。デバイスの種類としては、デバイスのゲート端子に電流ではなくて、電圧を与えて駆動する( エ )を使うことが最近では一般的である。

この電力変換器はインバータと呼ばれ、基本波周波数で1サイクルの出力電圧が正又は負の多数のパルス列からなって、そのパルスの( オ )を変えて1サイクル全体で目的の電圧波形を得る制御がPWM制御である。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)制御角サイリスタ交流電力調整装置IGBT
(2)制御角ダイオードサイクロコンバータIGBT周波数
(3)制御角サイリスタ交流電力調整装置GTO
(4)転流重なり角ダイオード交流電力調整装置IGBT周波数
(5)転流重なり角サイリスタサイクロコンバータGTO周波数

2015年(平成27年)問9 過去問解説

商用交流電圧を入力とし同じ周波数の交流電圧を出力とする電力変換器において、可変の交流電圧を得るには( 制御角 )を変える方法が広く用いられていて、このときに使用するパワーデバイスは( サイリスタ )が一般的である。この電力変換器は( 交流電力調整装置 )と呼ばれる。
一方、一定の直流電圧を入力とし交流電圧を出力とする電力変換器において、可変の交流電圧を得るにはパルス状の電圧にして制御する方法が広く用いられていて、このときにオンオフ制御デバイスを使用する。デバイスの種類としては、デバイスのゲート端子に電流ではなくて、電圧を与えて駆動する( IGBT )を使うことが最近では一般的である。

この電力変換器はインバータと呼ばれ、基本波周波数で1サイクルの出力電圧が正又は負の多数のパルス列からなって、そのパルスの( 幅 )を変えて1サイクル全体で目的の電圧波形を得る制御がPWM制御である。

答え (1)

2015年(平成27年)問11

次の文章は、太陽光発電システムに関する記述である。
図1には、商用交流系統に接続して電力を供給する太陽光発電システムの基本的な構成の一つを示す。
シリコンを主な材料とした太陽電池は、通常1V以下のセルを多数直列接続した数十ボルト以上の直流電源である。電池の特性としては、横軸に電圧を、縦軸に( ア )をとると、図2のようにその特性曲線は上に凸の形となり、その時々の日射量、温度などの条件によって特性が変化する。使用するセル数をできるだけ少なくするために、図2の変化する特性曲線において、△印で示されている最大点で運転するよう制御を行うのが一般的である。
この最大点の運転に制御し、変動する太陽電池の電圧を一定の直流電圧に変換する図1のA部分は( イ )である。現在家庭用などに導入されている多くの太陽光発電システムでは、この一定の直流電圧を図1のB部分のPWMインバータを介して商用周波数の交流電圧に変換している。交流系統の端子において、インバータ出力の電流位相は交流系統の電圧位相に対して通常ほぼ( ウ )になるように運転され、インバータの小形化を図っている。
一般的に、インバータは電圧源であり、その出力が接続される交流系統も電圧源とみなせる。そのような接続には、( エ )成分を含む回路要素を間に挿入することが必須である。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)
(1)電力昇圧チョッパ同相インダクタンス
(2)電流昇圧チョッパ90°位相進みキャパシタンス
(3)電力降圧チョッパ同相インダクタンス
(4)電力昇圧チョッパ90°位相進みインダクタンス
(5)電流降圧チョッパ90°位相進みキャパシタンス

2015年(平成27年)問11 過去問解説

図1には、商用交流系統に接続して電力を供給する太陽光発電システムの基本的な構成の一つを示す。
シリコンを主な材料とした太陽電池は、通常1V以下のセルを多数直列接続した数十ボルト以上の直流電源である。電池の特性としては、横軸に電圧を、縦軸に( 電力 )をとると、図2のようにその特性曲線は上に凸の形となり、その時々の日射量、温度などの条件によって特性が変化する。使用するセル数をできるだけ少なくするために、図2の変化する特性曲線において、△印で示されている最大点で運転するよう制御を行うのが一般的である。
この最大点の運転に制御し、変動する太陽電池の電圧を一定の直流電圧に変換する図1のA部分は( 昇圧チョッパ )である。現在家庭用などに導入されている多くの太陽光発電システムでは、この一定の直流電圧を図1のB部分のPWMインバータを介して商用周波数の交流電圧に変換している。交流系統の端子において、インバータ出力の電流位相は交流系統の電圧位相に対して通常ほぼ( 同相 )になるように運転され、インバータの小形化を図っている。
一般的に、インバータは電圧源であり、その出力が接続される交流系統も電圧源とみなせる。そのような接続には、( インダクタンス )成分を含む回路要素を間に挿入することが必須である。

答え (1)

2016年(平成28年)問10

次の文章は、太陽光発電システムに関する記述である。
図1は交流系統に連系された太陽光発電システムである。太陽電池アレイはインバータと系統連系用保護装置とが一体になった( ア )を介して交流系統に接続されている。
太陽電池アレイは、複数の太陽電池セルを直列又は直並列に接続して構成される太陽電池モジュールをさらに直並列に接続したものである。太陽電池セルはp形半導体とn形半導体とを接合したpn接合ダイオードであり、照射される太陽光エネルギーを( イ )によって電気エネルギーに変換する。
また、太陽電池セルの簡易等価回路は電流源と非線形の電流・電圧特性をもつ一般的なダイオードを組み合わせて図2のように表される。太陽電池セルに負荷を接続し、セルに照射される太陽光の量を一定に保ったまま、負荷を変化させたときに得られる出力電流・出力電圧特性は図3の( ウ )のようになる。このとき負荷への出力電力・出力電圧特性は図4の( エ )のようになる。セルに照射される太陽光の量が変化すると、最大電力も、最大電力となるときの出力電圧も変化する。このため、( ア )には太陽電池アレイから常に最大の電力を取り出すような制御を行うものがある。この制御は( オ )制御と呼ばれている。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)パワーコンディショナ光起電力効果(b)(a)MPPT
(2)ガバナ光起電力効果(b)(b)PWM
(3)パワーコンディショナ光起電力効果(a)(b)MPPT
(4)ガバナ光導電効果(b)(a)PWM
(5)パワーコンディショナ光導電効果(a)(b)PWM

2016年(平成28年)問10 過去問解説

図1は交流系統に連系された太陽光発電システムである。太陽電池アレイはインバータと系統連系用保護装置とが一体になった( パワーコンディショナ )を介して交流系統に接続されている。
太陽電池アレイは、複数の太陽電池セルを直列又は直並列に接続して構成される太陽電池モジュールをさらに直並列に接続したものである。太陽電池セルはp形半導体とn形半導体とを接合したpn接合ダイオードであり、照射される太陽光エネルギーを( 光起電力効果 )によって電気エネルギーに変換する。
また、太陽電池セルの簡易等価回路は電流源と非線形の電流・電圧特性をもつ一般的なダイオードを組み合わせて図2のように表される。太陽電池セルに負荷を接続し、セルに照射される太陽光の量を一定に保ったまま、負荷を変化させたときに得られる出力電流・出力電圧特性は図3の( (b) )のようになる。このとき負荷への出力電力・出力電圧特性は図4の( (a) )のようになる。セルに照射される太陽光の量が変化すると、最大電力も、最大電力となるときの出力電圧も変化する。このため、( パワーコンディショナ )には太陽電池アレイから常に最大の電力を取り出すような制御を行うものがある。この制御は( MPPT )制御と呼ばれている。

答え (1)

機械電験3種
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